Harmless Weblog

読書

ミステリ再読 χの悲劇

「χの悲劇」(森博嗣)を再読了。Kindle版

合本版でまとめられたβまでの作品からまた大きな転換があり、この辺から明確に未来を描くミステリSFになってくる。

シリーズ中の登場人物と「親しい友人です」みたいな描写が多くて、「え?これって誰?」みたいな考えさせられるところが多い。まあこれはXシリーズ全体に共通するところかもしれない。全シリーズ通して読んでいる読者には、殺人事件のトリックよりこちらの方がずっと気になると思う。

あとは電脳戦の描写。自律的に動き回るエージェントというのかワームというのか、そういうのをサクサク書いて放つんだけど、この辺りは最近自分でもVPSを管理するようになって面白く読めた。

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読書   2022/11/04   gena

SF本再読 三体II

「三体II 黒暗森林(上・下)」(劉慈欣)を再読了。Kindle版。

やっぱり三体はIIが最高かもしれない。あらためてIIIを読みつつこれを書いているけれど、「四次元」の登場あたりからどうも現実感が薄くなっていくような感じ。これはたぶん普段からイーガンで慣れているからだと思うんだけど、三次元人がそのまま四次元に入ってもああいう描写にはならないだろう、という違和感があるためだと思う。三次元の眼球では結局四次元空間の三次元へ投影された断面が見えるだけで、四次元を認識するなら四次元身体(超球の眼球)が必要なのでは?、とか。

IIが最高なのは、SFとしてめちゃくちゃ面白いストーリーの中で、フェルミのパラドックスへの回答を説得力のある形で与えてくれる点だと思う。これで世界観が変わった人は多いのでは。

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読書   2022/10/22   gena
タグ:Kindle , SF , 劉慈欣

ミステリ再読 キウイγは時計仕掛け

「キウイγは時計仕掛け」(森博嗣)を再読了。Kindle合本版。

合本版はここまでの収録。後期三部作は2016年にχの悲劇だけ読了している。2022年10月現在でまだ完結していないという、森さんにしては珍しく『溜め』があるシリーズ。おそらく他のシリーズの進行との相乗効果を狙った演出と想像する。

な、一言だけいっとくけどな、一目でこの人だって、決めてかからんこと。もっとええ人がおるかもしれんって、いっつも自分に言い聞かせる。俺なんかな、それが座右の銘だでね」
「何が?え……、もっとええ人がおる、が?」
「違うわ。決めてかからんこと、だがね」
森博嗣. Gシリーズ9冊合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.26985-26988). Kindle 版.

ここだけじゃなく、加部谷さんの将来を暗示させる伏線があちこちに散りばめられていて可哀想になってきた。海月くんひどいよなぁ。

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読書   2022/10/16   gena

ミステリ再読 ジグβは神ですか

「ジグβは神ですか」(森博嗣)を再読了。Kindle合本版。

初読は2014年だけど、ラストのインパクトはやっぱり覚えていた。ここからKindle版に切り替えていた。

ここで一気に時間軸が飛んでしまうのも新鮮だった。

「あれぇ、いやしくもって、どういう意味でしたっけ」雨宮が山吹にきいている。
「かりそめにもっていう意味じゃない?」
「そっちの方がわかりません」
森博嗣. Gシリーズ9冊合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.21350-21352). Kindle 版.

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読書   2022/10/02   gena

ミステリ再読 目薬αで殺菌します

「目薬αで殺菌します」(森博嗣)を再読了。Kindle合本版。

加部谷さんってGシリーズではメインキャラクタでヒロイン的位置付けなのに、なんか報われなくてちょっと可哀想な感じ。

「いえいえ、こういうときはですね、男性だったら、君たちが食べなよって言うもんじゃないですか?」
「そんなに食べたら太るんじゃない?」
森博嗣. Gシリーズ9冊合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.18889-18890). Kindle 版.

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読書   2022/09/18   gena

SF本再読 三体

「三体」(劉慈欣)を再読了。Kindle版。

スピンオフ小説の三体Xが出て早速読み始めたんだけど、これはやっぱり最初から読み直した方が良いと思い直して、再読を開始。

2年ぶりに再読したけれど、いやー、こんなに面白かったっけ?というくらい面白い。マーダーボットとかレギオンかイーガンともまた全然違う路線で、訳者の大森さんの解説にもあったけれど、ベイリーとかそっち系の面白さかも。

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読書   2022/09/10   gena
タグ:Kindle , SF , 劉慈欣

ミステリ再読 ηなのに夢のよう

「ηなのに夢のよう」(森博嗣)を再読了。Kindle合本版。

事件の謎は謎のまま放置されて、その一方でレギュラメンバの方はいろいろと大きな展開がある転換点。改めて読んでみるといろいろと盛りだくさんだった。

初読は2010年。それでも本作はシリーズ読者にとって印象的なシーンが多く、けっこう覚えていた。

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読書   2022/09/03   gena

SF本読了 スーパーカブ8

「スーパーカブ8」(トネ・コーケン)を読了。Kindle版。

最終巻。巻を重ねるごとにカブの活躍シーンは減っていくんだけど、まあバイクのお話ではなくて小熊さんの成長ストーリーと考えれば納得のラストかな。

読んでいるとバイクに乗りたくなったりガレージ付きの物件が欲しくなったりいろいろ危険なシリーズだったので、一区切りして物欲を収めることができそう。

事故を起こしたライダーのヘルプに行った時は、相手が四十過ぎの初老男性で、
トネ・コーケン. スーパーカブ 8 (Japanese Edition) (p.176). Kindle 版.

40代は初老…。うん、まあ初老かな。せいぜいここに描かれているような老害に自分がならないように気を付けたい。

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読書   2022/08/17   gena

ミステリ再読 εに誓って

「εに誓って」(森博嗣)を再読了。Kindle合本版。

バスジャックのお話。大きなトリックとしてはなんとなく覚えていたけれど、やっぱり細部はほとんど忘れていた。

小さな離島で同人誌趣味がいかに難しいか、という謎知識も得られる。

「世界に、ミッキーは一人しかいないんですよ」
「一匹だろう?」
森博嗣. Gシリーズ9冊合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.9601-9602). Kindle 版.

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読書   2022/08/16   gena

SF本読了 最終人類

「最終人類(上・下)」(Z.ジョーダン)を読了。Kindle版。

Kindle本のセールで購入。この人の作品は初読、というか小説初作品なのかな。初めて出版にこぎつけた小説作品(しかも長編)で翻訳までされて、というパターンは最近では珍しいのでは。

上巻はまあつまらなくはないけれど、『知性階級』という絶対的な評価基準で差別される宇宙、というなんとも気の滅入る設定がキツかった。下巻でネットワークとオブザーバ類のどちらに正義はあるのか、的な展開でようやく面白くなってきた感じ。ラストはどうせなら無限の上位階層というビジョンに下級の者がどうやって影響を及ぼせるのか、というところに踏み込んで欲しかったかな。

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読書   2022/08/12   gena