Harmless Weblog

SF

SF本読了 アステリズムに花束を

「アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー」を読了。Kindle版。

全体的に面白かったけれど、やっぱり好みとしては小川一水氏が頭一つ抜けていて、新しく読んだ作家さんのなかでは、他の作品も読んでみたい、とまで思うものはなかったかな。

キミノスケープはインフラや物資がそのままで、自分以外が世界から消えてしまうという、誰もが想像したことがあるであろう中2的設定が良かった。四十九日恋文も設定が秀逸。草野原々氏はなぁ。グロいのが苦手なのでちょっと。幽世の設定とかは面白いのでグロさ無しで読みたい感じ。月と怪物はソ連SFという未知のジャンルで興味深かった。色のない緑、これは小川一水氏を別にすると一番良かったかな。

【収録作品】

  • キミノスケープ(宮澤伊織)
  • 四十九日恋文(森田季節)
  • ピロウトーク(今井哲也)
  • 幽世知能(草野原々)
  • 彼岸花(伴名練)
  • 月と怪物(南木義隆)
  • 海の双翼(櫻木みわ×麦原遼)
  • 色のない緑(陸秋槎/稲村文吾訳)
  • ツインスター・サイクロン・ランナウェイ(小川一水)

≫ 続きを読む

読書   2021/10/02   gena
タグ:Kindle , SF , 小川一水

SF本再読 天冥の標II

「天冥の標II 救世群」(小川一水)を再読了。Kindle合本版。

文庫の初版は2010年だけど、COVID-19のパンデミックで再注目されたようで、普段SFを読まない人たちにも読まれたのでは、という印象。

初読は2010年5月で、以来一度も読み返していなかったのでかなり忘れていた。確かにCOVID-19以降だとだいぶ受け取る側の意識が変わっているかも。過去にエボラ出血熱とかの本は読んで怖いなぁ、とは思ったけれど所詮は対岸の火事だった。それが新型コロナのパンデミックが起きて、「冥王斑について、この点は新型コロナと似てる、ここは違う、もし新型コロナがこんな風に変異したらヤバいな」とか、より具体的に想像しながら読んでいることに気づいた。

あとはやっぱりヘヴィで救いがなく、読んでいて辛くなる。この先まだまだ厳しいことが起こるんだよなぁ。

翌朝九時、東京発博多行き新幹線のぞみ号の禁煙指定席で、アイスコーヒーの缶を片手にぐったりしている青年の姿があった。
小川 一水. 《天冥の標》合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.11187-11188). Kindle 版.

わざわざ「禁煙」指定席と書かなくてはいけない時代のお話だったわけだ。「医師」が「屋内の」喫煙所でスパスパタバコを吸っていた時代もそれほど昔のことではないということ。この点だけはこの10年で本当に良くなったと思う。

≫ 続きを読む

読書   2021/09/23   gena
タグ:Kindle , SF , 小川一水

SF本読了 アメリカン・ブッダ

「アメリカン・ブッダ」(柴田勝家)を読了。Kindle版。

この方の本は初読。元々好物の仏教SFの表題作と、民俗学と絡めた他の作品も大変面白かった。硬軟のバランスがちょうど良い感じで、軽すぎず重すぎずちょうど良い気持ちよさ。

【収録作品】

  • 雲南省スー族におけるVR技術の使用例
  • 鏡石異譚
  • 邪義の壁
  • 一八九七年:龍動幕の内
  • 検疫官
  • アメリカン・ブッダ

≫ 続きを読む

読書   2021/09/10   gena
タグ:Kindle , SF , 柴田勝家

SF本再読 天冥の標I

「天冥の標<1> メニー・メニー・シープ(上下)」(小川一水)を再読了。Kindle合本版。

天冥は文庫本でVIまで買って、その後Kindle版でIXまで買っていた。完結のXをどうしようか、また最初の方の話を忘れているので再読もしたいし…と思っていたら、ちょうどKindle本の半額セールで合本版が安くなっていたので購入。今までに買った単品のKindle版が無駄になってしまうけれど、文庫本を1巻ずつKindleで買い直すよりはお得だったので。

いよいよ全巻通して完結まで一気に読めると思うと感慨深い。1巻の初読は2010年2015年に8巻と同時くらいに一度再読している。

天冥シリーズは真面目なハードSFなんだけど、一方でエロも大きなテーマのひとつなので、そこがオールタイムベストになるかどうかの分かれ目かも。

あと改めて1巻を読み返してみて、やっぱり植民地の電力事情は気になった。特に「配電制限」というオペレーション。検索してみるとわかるけれど、こういう形の電力の供給制限というのは実際はできない。現在の技術でできるのは時間やエリアで「停電」させる輪番停電とか計画停電というオペレーション。

――それもこれも、配電制限のせいだった。いまやどの家庭も、夜間に電灯を一つか二つ灯すのが精一杯で、暖房器具など使うべくもなかったのだ。
小川 一水. 《天冥の標》合本版 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.6902-6903). Kindle 版.

単純に供給力上限を絞った場合は、負荷が一定以上になった時点でエリア一体が停電するけれど、その場合でも「世帯で電灯1つか2つが精一杯」みたいなことはユーザー側ではわからない。スマート電力メーター的なもので、動的に世帯毎のアンペア上限を決める(例えば1Aを超えたらブレーカを落とす)ことはできるかもしれないけれど、ネットどころかテレビもない植民地のレベルだと難しそう。

≫ 続きを読む

読書   2021/09/03   gena
タグ:Kindle , SF , 小川一水

SF本読了 星系出雲の兵站ー遠征ー5

「星系出雲の兵站ー遠征ー5」(林譲治)を読了。Kindle版。

星系出雲シリーズもいよいよ完結。最後まで面白く読めた...けど、最後はやっぱり猫に持っていかれた感がある。林譲治さんはツィッターでもにゃんこの写真をいつもアップしてくださっているのでその点は非常に親近感がわく。

シリーズを通して。そもそも「兵站」という地味なところに焦点を当てているので、ファーストコンタクトに宇宙戦争という派手なテーマの割に、全体的に地味だったかな。長い説明ゼリフが多いのも気になる。そのドローンの名前だとか細部の描写だとかはストーリーに何か影響があるの?と思いながら最後まで読んでもぜんぜん意味がなかったり。ある意味斬新だとは思った。

あとは98%くらいにわたりさんざん謎が提示される割に、最後2%で結局「全てを知る犯人」が現れて「解答を説明」してくれるっていう終わり方もどうなんだろう。説明されなかった点は完全に放置だし、これでもかとディティールに凝ったタオ、水神、火伏(とその奥様)たちはその後どうなったの?とかの回収もなし。どうせなら最終巻はこの辺の後日談でも良かったのでは、と安易に思うのは素人だから?

≫ 続きを読む

読書   2021/08/08   gena
タグ:Kindle , SF , 林譲治

SF本読了 星系出雲の兵站ー遠征ー4

「星系出雲の兵站ー遠征ー4」(林譲治)を読了。Kindle版。

いろいろとわからないことだらけの状況のまま、異星人とのコミュニケーションもままならず、クライマックスに向けてどう納めていくんだろう、という興味で読んでいる。

RFIDタグが出てきたり、妙に現代地球と似通った技術が登場するんだけど、何度も書くけどFTL航法とのギャップがすごい。

≫ 続きを読む

読書   2021/08/06   gena
タグ:Kindle , SF , 林譲治

SF本読了 三体III 死神永生

「三体III 死神永生(上・下)」(劉慈欣)を読了。Kindle版

いよいよ完結編。発売が待ち遠しくて、発売されて即購入。こういうのは珍しい。

とにかく三体II黒暗森林が最高潮に盛り上がって面白過ぎたので、完結編でこれ以上どのように盛り上げて終わらせるのかが気になった。

読み始めてみれば、IIとはまた違った角度、とんでもないスケールと、もうお腹いっぱいという面白さ。下巻は「三体ロス」が怖くてなかなかページを進められなくなってしまった。これも最近では珍しい。

出たばかりの本なのでネタバレは避けるけれど、この三部作は文句なくこの10年で最高傑作と思う。個人的に何度も読み返したくなるのはイーガンの方だけど、三体はイーガンと同等のスケール感で、小難しい理論描写を省いて読みやすくした感じ。

しばらく時間を置いてからじっくり再読したい。

昔のテレビが電波を受信しないときに画面に映し出したランダムな砂嵐のような映像だ。
劉 慈欣. 三体Ⅲ 死神永生 上 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.6281-6282). Kindle 版.

テレビの砂嵐と聞いてもピンとこない読者も増えているだろうなぁ。

≫ 続きを読む

読書   2021/07/31   gena
タグ:Kindle , SF , 劉慈欣

SF本読了 星系出雲の兵站ー遠征ー3

「星系出雲の兵站ー遠征ー3」(林譲治)を読了。Kindle版。

いろいろと謎のままどんどん話が進んでしまって、残り2巻で完全にスッキリするのか心配になってきている。

異星人と同等以上に謎で面白いのが人類の播種の背景。今回は重要な遺物も発見されて、これと異星人がどう絡んでくるのか。そして地球について何かわかってくるのか、というあたりが気になる。

≫ 続きを読む

読書   2021/07/18   gena
タグ:Kindle , SF , 林譲治

SF本読了 星系出雲の兵站ー遠征ー2

「星系出雲の兵站ー遠征ー2」(林譲治)を読了。Kindle版。

世界観にもだいぶ馴染んできたし、面白いんだけど、いまいちキャラ萌えというほどでもないし、びっくり仰天の展開というわけでもないので、やっぱり淡々とシミュレーションが進んでいるのを見ている雰囲気。

三体IIIと並行して読んでいるので余計にそう思うのかも。

≫ 続きを読む

読書   2021/07/10   gena
タグ:Kindle , SF , 林譲治

SF本読了 星系出雲の兵站ー遠征ー1

「星系出雲の兵站ー遠征ー1」(林譲治)を読了。Kindle版。

「ー遠征ー」が付いたけれど実質そのままストーリーは続いていて、遠征まで合わせてひとつのシリーズということみたい。遠征は5巻まで。

三体IIIと並行して読んでいるけれど、同じファーストコンタクト宇宙SFでこんなに違うものかと、比較しながら楽しんでいる。

星系出雲の世界ではやっぱりAFD航法だけがオーパーツ的にアンバランスな要素に思える。三体世界では人類より遥かに物理学で先行している三体文明ですら、超光速航法は実現していない(ただし即時通信は実現している)。

≫ 続きを読む

読書   2021/06/27   gena
タグ:Kindle , SF , 林譲治